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From: Akitaka HOSOMI <hosomi@ga2.so-net.ne.jp>
Subject: Re: デジタルフィルタだっちゅうの〜( All's Right With The World )
Date: 1998/08/03 06:10:10
Reference: junge/00119

8月2日に、take-winさんは書きました。

>「デジタルフィルタ」のお話、読んでも
>単語としてわかるのは助詞や助動詞だけで
>何のことを書いているのか、ぜ〜んぜんわかりませんでした。
>
>でも見ていて、これってビデオの
>「昔撮ったビデオもきれいに映ります。」
>の回路に使えるんではないかしら?
>と思っていたのですが、・・・
>今回のレスで「ビデオ回路云々」と言う単語が出たと言うことは
>当たらずとも遠からず、でしょうか?
>
>そういえば、以前HOSOMIさんに見せていただいた
>素人(及び何も考えてない中年おじさん)には
>何をしているんだかわからなかったサンプルプログラム。
>絵の中のゴミを取り除いたり、くっきりさせたりしてましたねぇ。
>こういうこと(デジタルフィルター云々)をやっていたわけですか?


空谷無有為、是、知る能わず



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さて、このスレッドの現在位置を示す標識として、フーリエ変換とコサイン変換について、
もう少し触れて、ひと区切りにする。

# 最近のトレンドである LOT や WAVELET に辿り着くには、まだ、それなりの道程が
# 必要なのさ。

以下、逐一ことわらないが、どちらも、離散空間で考えることにする。



フーリエ変換は、実数( サンプリングされたデータなので実数列ということだ )を、
複素平面へ写像する変換である。この時に、時間軸は、周波数軸に変換されるので、
信号解析などでは、周波数分析によく利用される。

※ 実際は、実数列に限らず、複素数列を扱える変換だ


ところで、この写像は、直交変換と呼ばれる 1 対 1 の写像であるため、逆変換が存在
する( 線型性以外にも、面白い特徴を、たくさん持っている )。

フーリエ変換を行列表現するとユニタリ行列となるため、逆変換の計算では、順変換を
ほんの少し修正するだけで良い。高速フーリエ変換( FFT )を行なう関数が、順方向、
逆方向の変換機能を共有しているのは、これに基づいている。


フーリエ変換自体は、取り扱う実数列の対称性を前提としていない。ただ単に、与えら
れた実数列の周期性を、暗黙に認めているのみだ。実は、この対称性を利用すると、興
味深い結果が得られる。

先に書いたように、フーリエ変換は複素平面への写像なので、計算過程で虚数を取扱う
必要がある。しかしながら、与えられた実数列に対称性を認める場合には、虚数成分、
または、実数成分の計算を考慮する必要が、全く失くなってしまうのだ。

前者は、コサイン変換、後者は、サイン変換と呼ばれている。これらの変換は、いわば、
フーリエ変換の特殊な状態であると考えられるので、フーリエ変換の持っている性質は、
そのまま、受け継がれる。


さて、虚数成分を扱わなくてもよいコサイン変換は、実数から実数への変換ということ
になり、計算の負荷は、本質的に軽くなる。

なお、仮定する対称性により、奇対称のコサイン変換、偶対称のコサイン変換が存在し、
周期性についても、周期、反周期が仮定できるので、結果的に、何種類かのコサイン変
換が得られる( これは、サイン変換についても同様である )。

これらのコサイン変換は、その変換基底が異なっているとされ、フーリエ変換が周波数
領域への変換であることから容易に想像されるように、コサイン変換の持つ変換基底は、
周波数成分で信号を記述するための基底ベクトルとなる。さらに、コサイン変換が、実
数から実数への変換であることと合わせて考えると、この変換を行なうことは、それが
そのまま、フィルタバンクとして機能すると見なして良い。

その他、コサイン変換の一部の物は、画像圧縮用途で、最適解に近い変換を与えること
なども、知られている。



以上のような特徴から、教科書で必ず出てくるフーリエ変換よりも、コサイン変換の方
を、応用面で、実際に、目にする場合が多い。

また、理工系なら、名前ぐらいは聞いたことがあるかも知れないが、

      カルーネン・レーベ変換( KLT ... Karhunen-Loeve Transform )
      アダマール変換( Hadamard Transform )
      ハール変換( Haar Transform )

は、フーリエ変換やコサイン変換と同じく、直交変換であり、それぞれ面白い特徴を
持っている。ハール変換は、最初に書いたウェーブレット( WAVELET )変換の一種だ。




# 全くの余談だけど、
# 離散的な形で畳込み演算( 畳込み和 )を知っているプログラマは、
# 一度、積分で書いてごらんなされ。
# あっ ! と驚いて、目からウロコが落ちる人も、きっと、いるに違いない。

# そういう時は、葉巻でもいかが?